有機農業をはじめよう/実践事例集

新規就農事例17.独立就農

自分らしさが出るウェブサイトで有機野菜を宅配

プロフィール

氏 名:古井 寛人さん(1978年生まれ)

住所:茨城県石岡市八郷地区

ウェブサイト:http://yasaibiyori.p2.weblife.me/

主な栽培品目:少量多品目栽培(約50品目)による旬の露地野菜

経営面積:約1.8ha

販 路:各家庭への個別宅配、飲食店・自然食品店への出荷

労働力:本人、入籍予定のパートナー、月1~2回の援農(2~5人程度)

就農までの経緯

愛知県出身。『全国有機農業者マップ』(日本有機農業研究会)を参考に農家を訪問。そのなかで、八郷地区で有畜複合経営を行っている「たまごの会」に、1年間大学を休学し住み込み研修。復学後、同地区の宇治田農場にて住み込み研修をしながら有機農業の地域的広がりをテーマに卒論を作成中に地域の有機農家と知り合いになり、家・農地などの情報を収集。2004年卒業後、地元農家に農地を紹介していただき、1haほどの耕作放棄地を借りて就農。

農家研修を通して栽培法や経営を学んで就農

「たまごの会」での研修を通して、鶏・豚・野菜・米の生産を行い、循環農業を行う有機農業を経験できました。その後、半年間滞在した宇治田農場では多品目の野菜づくりとともに、個人農家の経営感覚を学ぶことができました。この二つの経験が、とてもよかったと思います。

就農にあたっては、先輩農家や同世代の農家の存在も大きな決め手となりました。八郷地区は有機農家が多く、農家同士の交流も比較的盛んです。研修時代に広がった人との繋がりを大事にしたかったので、そのまま同地区に就農しました。就農後はJAやさと有機部会に5年在籍。定例会や圃場見学会を通して、品種の選定・トンネルやべた掛け、各野菜の栽培ポイントなど多くのことを学びました。

就農資金は、学生時代と就農前の半年間のバイトで得た100万円ちょっとです。トラクター(中古)など大きな投資は余裕がなかったので、親から借り、就農から2年程はバイトも続けながらの農業でした。

「食べて美味しい野菜」への徹底したこだわり

学生時代の援農体験で、食・自然・環境・生活が当たり前のように結びついて成り立っている有機農業という仕事に強烈に惹かれました。何度も通いながら、その季節ごとに畑で食べたトマトやカブなどがとても美味しく、「食べ物ってこんなにおいしかったのか」とびっくりしたのが、いまも忘れられません。美味しさは人を自然と笑顔にしてくれます。畑で経験した皆の笑顔を、自分の作った野菜で広げていけたらとてもステキだなとの思いを変わらず持ち続けています。

就農当初は地元の鶏糞や豚糞を安く分けていただき、発酵させながら堆肥として使っていましたが、近年は畑を増やしたこともあり、ソルゴーなどの緑肥栽培を取り入れて、窒素が効きすぎないようにし、多少小振りでも柔らかく素直な味の野菜ができるようにしています。また発酵肥料も米ぬか主体に変えながら、食味の向上に努めています。

「食べて美味しい野菜」に徹底的にこだわり、同じ品目の野菜でも、品種はかなり細かく選んでいます。毎年少しずつ気になる品種を試しながら、野菜セットに取り入れるかを検討しています。「その野菜にとって一番おいしい時期」を意識するうちに、自ずと多品目栽培になりました。

チラシを配り、個別宅配の顧客を確保

季節の野菜セット10品目程度をいれた「野菜日和Box」(送料込2400円)を宅配便で送っています。1週間で無理なく食べきれる量を、週1回または隔週(2週に1回)で送り、端境期(3月下旬~4月上旬)はお休みすることがあります。継続購入の方には“直前お知らせメール”により、何が届くか事前に分かるようにしています。顧客が安定してくるまでの2年間程は常にチラシをもって回り、住宅地や団地を中心に配りました。

就農時は、技術的には未熟ながらも“野菜のお兄さん”という感じで、多くのお客様に食べることで応援していただきました。年齢や経済状況・性格・特技・友好関係などで強みも大きく変わりますが、そこを長所として販路に活かしていければスムーズにスタートできると思います。

きれいなHPではなく、自分らしさが出るようなHPを

HPは作るのは大変ですが、一度作ってしまえば、後の販路拡大が非常にスムーズになります。ワードやエクセル程度の知識があれば、市販(あるいは無料)の作成ソフトを使って、大まかな枠組みは簡単にできます。一旦公開して、後は必要に応じて少しずつ追加・手直ししてきました。必要と感じた時点で難しい知識や技術を学んで追加しています。HPやブログでリアルタイムに野菜の状況を更新することが新たな顧客の獲得に繋がってきました。

“きれいなHP”ではなく、“自分らしさ”が出るようなHPを意識しています。大手流通業者の精錬された魅せるウェブサイトがたくさんある中、多少デコボコでも“ごんべえ農園らしさ”に惹かれたお客様が野菜を購入してくれます。「有機野菜がほしい」から「ごんべえ農園の野菜がほしい」という形になるように目指しています。

ネット販売では、お客様も生産者も、お互いの顔がなかなか見えません。色々な工夫でその距離を縮めることが大切です。野菜についての連絡・お便りなどを通して、より充実した農園らしさを届けられるように努力しています。また、セット野菜という特殊な販売方法では、生産者が“作りたい野菜”とお客様が“食べたい野菜”が必ず一致するとは限りません。そこで、自宅から約40分のつくば市内へは直接配達を行い、その時の雰囲気や声をフィードバックして、セット野菜の品目に参考にしてきました。