有機農業とは?
一般的な定義
2006年に制定された有機農業推進法によると「化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと並びに遺伝子組換え技術を利用しないことを基本として、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した農業生産の方法を用いて行われる農業」と定義されています。一般的な農業では当たり前のように農薬や化学肥料が使用されますが、それらは田畑をはじめ多くの生きものにとって過酷なものであり、資源・エネルギー的にも持続可能なものではなさそうです。それらを出来るだけ低減しようとする農業が有機農業なのです。
生きもの同士の共存関係を活かす農業
他にも農業では耕したり、掘り起こしたり、肥料を入れたり、土の環境を乱すことが多くあります。それも田畑の生きものにとっては過酷なものなのですが、それでもなお生きものが棲みつき、それら同士の関係が築かれていきます。 有機農業はこの生きもの同士の共存・共生関係を重視し、田畑に多くの種類・量の生きものが暮らせる管理を行います。 生きもの同士の関係が豊かになると、病原菌・害虫といった言葉は意味をなさなくなります。食べる・食べられる・棲み分ける、などの関係が沢山できてくると、特定の生きものだけが爆発的に増えることはないからです。たとえ病原菌や害虫がいても、大きな被害は出なくなります。農薬による防除とは異なり、この仕組みが栽培技術の根本にあるのが特徴です。
健康な土から生まれる健康な作物
生きもの同士が豊かに共存する状態は、人で喩えれば「健康」であり「抵抗力」がある状態です。つまり土が健康だということです。作物にも同じことがいえます。健康な作物は、病原菌や害虫への抵抗性や回復力を持っているのです。 土の健康を支えるのは有機物です。多くの土の中の生きものが暮らしやすくするには、エネルギー源や棲みかとなる、いろいろな有機物を補給しなければなりません。またそれは巡り巡って作物の栄養源にもなります。これらは土の食べ物と言っていいでしょう。 しかし注意したいのは、土に必要以上の有機物を与えないことです。土が食べ過ぎの状態になると、そこに棲む生きものは単純なものになってしまうからです。また作物も食べ過ぎな状態になり、人と同様「不健康」になってしまいます。
地域資源を活かした持続可能な生産
土に与える有機物は、可能な限りその地域にある自然資源とし、自然界の大きな物質循環を手本にするべきです。生きものは太陽のエネルギーを利用して地域の資源を様々な形に変えて、また生きもの同士で養分などをやり取りしています。その仕組みをできるだけ壊さずに、作物を少しだけ有利にしてあげる管理が大切です。 また、農業以外の産業への配慮も必要です。山林の落ち葉も、家畜のフンも、食べ物の残りかすも、すべて田畑の資源になります。日本の伝統的な循環を新しい形で再構築していくことが求められています。
土の健康が作物を健康にし、健康に育った作物こそが人の健康を支えます。有機農業は、使う有機物の量や質に配慮し、地域の資源を活かしながら、田畑の生きものをバランスよく管理します。そして健康な状態を保つことでいろいろな問題を解決する「持続可能」な生産システムなのです。
詳しくは、ガイドブック「有機農業をはじめよう!」シリーズを参照ください。