有機農業をはじめよう/有機農業への道

1.有機農業をはじめるにあたって

有機農業をはじめようとしている方に、まず知っておいてもらいたいことをまとめてみました。

まだまだ少数派

1980年頃は実施者も少なく、草取りや病中害対策が大変でした。そのため「勇気(が要る)農業」などと揶揄されたり、実施者は変わり者扱いされたりしていました。それだけならまだいいのですが、「お前の畑から虫が来る」「雑草の種が飛んでくる」などと言われたりすることもありました。またそれらは、農業者の技術が未熟である場合は事実でもありました。

しかし長年の有機農業者の地道な努力の結果、それらは技術的にかなり解決しました。それでも、有機JAS認証という認証を取っている有機農家は、全体の0.2%程度、取っていない有機農家を合わせても0.4%程度です。まだまだ実施者が少ない現状があります。

しかし期待は大きい

そのような昔とは異なり、今は国が有機農業推進の法律をつくるようにまでなり、実施者も徐々に広がりを見せています。有機農業は、新しく農業をはじめようとする人の約25%が希望し、約90%が関心を持っているという調査結果もあります。生物多様性の保全をはじめとする環境問題やエネルギー問題、食の安全問題がクローズアップされる現代において、期待が高まるのは必然でしょう。大学のサークル活動や市民活動など、農外からの応援も多くあります。また、現状では実施者が少ないことをチャンスと考えている人も多くいます。

ノウハウの整理は未だ不十分

有機農業でうまく経営をしている農家は数多くありますが、その栽培技術は農薬や化学肥料を使った農業と比べるとまだまだ体系的に整理されてはなく、教科書と言えるものはなかなかありません。技術の基本が各地域の風土や生きものに強く根差したものであり、多種多様だからです。そのため普及指導員やJAに尋ねても、技術は十分に教えてもらえないことも多くあります。これを根拠に「有機農業は止めておいた方がいい」と“親切心”から言う人もいますが、逆に自然とのふれあいや日々の発見が楽しみや生きがいとなる人もいます。

仲間づくりがとても大切

多くの場合、栽培技術や販売方法などの農業経営は先輩農家から学ぶことになります。情報交換が出来る、志を同じくする仲間づくりが重要となってきます。他にも得意作物を持ち寄って共同出荷したり、機械を共同利用したり、加工までして付加価値をつけたり、観光農園化やレストランと直結したり・・・それぞれ得意な作業を役割分担していくとさらに経営が安定します。新規参入者はさらに土地や家探しなど、その土地に詳しい仲間にお世話にならなければならないことが多くあるでしょう。

その土地の人になる

農業を始めるということは、その土地に移り住み、そこでずっと暮らしていくということです。文字通り、土地に根差した産業なため、引っ越しは簡単には出来ません。 地域によって様々ですが、農村には農村のルールがあります。多くの場合、農地や用水路などはその土地の先祖が苦労して開拓したものであり、用水路などは共同管理されています。有機農業への理解度も様々です。そのような中で家や土地を手に入れ、地域の人々と付き合って暮らしていくことが求められるのです。新規就農者はその点は大変かもしれませんが、逆に全国の様々な農村から就農地を選べるという見方もあります。具体的にイメージ出来ない場合は、研修などを通じて農村の生活を肌で感じてみることが大切でしょう。

「正しい農業」は立場によって様々

有機農業をはじめるには、多くの場合、情熱・理念・確信のようなものが必要です。しかし「農薬・化学肥料を使う農家はけしからん」「有機農業が正しく、他の農業は全て間違っている」という独善的で排他的な考え方は、つまらない対立を生むだけです。食料を生産する者はそれだけで同志ですし、他の形態の農家からも学ぶべきところは沢山あります。色々な農業形態があり、それぞれ一理あり、その中から自分は有機農業を選んだ、「有機農業もいいよ」というようなバランスの良い考え方が必要です。

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