有機農業をはじめよう/コラム記事

8.生ごみでボカシ肥をつくる(家庭編)

生ごみの堆肥化はむつかしくない

生ごみは堆肥にするのがむつかしく、嫌われます。その理由は、

  1. 水気が多いので扱いにくい。
  2. すぐに腐りやすい。腐ると悪臭が出る。
  3. 台所のごみなので、食事ごとに素材も変わるため、なかなか堆肥化の方法が一定しない。だから、ある家で成功しても、お隣でうまくいくとは限らない。
  4. 失敗しやすい。

といった理由があるからです。

実はそんなにむつかしくはありません。生ごみの堆肥化をうまくやろうと思えば、この原因をひとつずつクリアすればよいのです。それには、

  1. 水分の少ない、乾燥した材料をいっしょに混ぜて、ごみの水分を吸いとってやる。水分40%にする。
  2. すぐに腐るのは、腐敗菌がいるためで、腐敗菌数より圧倒的に数多く発酵菌をまいてやれば、多勢に無勢で発酵菌が勝ち、うまく発酵する。
  3. 素材の組成によって、堆肥化を考えればよい。つまり窒素の多い肉・魚なのか、窒素の少ない野菜くずなのか。窒素が少なければ窒素の多いもの(油粕・米糠)を、窒素が多ければ少ないもの(枯葉・枯草など)を混ぜる。
  4. 失敗しなければよい。

かなり強引な説明になりましたが、可能性を考えてみましょう。

  1. (1)金をできるだけかけないこと。これがいちばん大事なことです。世の中に家庭用の堆肥化機械なるものが売られていますが必要ありません。要るのはふた付きのポリバケツだけです。
  2. ただで手に入る発酵補助材料を集めること、みつけること。手はある!米屋から出る米糠をタダでもらうことです。家庭用精米機があるなら、毎日でる米糠で十分間に合います。米糠は水分含量が低いので(10%程度)水分含量の高い生ごみに混ぜれば、うまく水分を調節できるのです。水分の目標を40%以下にすること。つまり糠:生ごみ=1:1にするのです。厳密でなくてけっこう。いい加減な比でけっこうなのです。このあたりをいっしょうけんめいやろうとすると、かえって失敗したりしてイヤになり、すぐに飽きてしまうのです。ぐうたらでいきましょう。米糠がこれより多くなっても問題はないのです。その分だけ水分が少なくなるだけですから。

いちばん失敗しやすいのはここのところ。そして、失敗したくないなら、

  • 生ごみの水分をできるだけ切っておくこと。
  • 生ごみは米糠にまぶすようにして生ごみから出てくる水分を米糠に吸わせること.つまりフライ料理でパン粉をつける要領でまぶすようにすること。
  • 生ごみどうしが固まってくっついたようにせず、できるだけバラバラにすること。

要するに、てんぷらやカツを揚るとか、焼飯の要領を思い出してください。料理の続きだと思って。

  1. 米糠の他に、できることなら油粕を混ぜれば、成功率はぐっとあがる。この場合は、油粕:糠:生ごみ=1:1:1の割合で混ぜる。要領は(2)と同じ。
  2. 発酵菌を均一に、かつ、菌数を多く接種するには、液体発酵菌を100倍位に薄めて霧吹きスプレーに入れて使う。水滴が細かいほど均一に発酵菌を接種できる。

つまり、生ごみをフライ料理のパン粉をまぶすような状態にしておき、そこへ霧吹きで発酵菌をぶっかける。ポリバケツに直接入れてゆくなら、ゴミを米糠や油粕と混ぜながら発酵菌を吹きつける。

ところで、米糠や油粕と生ごみを混ぜるいちばん手軽な方法は、ポリ袋やゴミ袋を使うこと。この中に、あらかじめ米糠と油粕を入れておいて、少し湿ったかなーという程度に霧吹きで発酵菌を吹きかけておく。その後に、生ごみを入れ、油粕や米糠を先程説明した分量入れる。袋の口を握り、袋を風船のようにしたまま、袋全体をひっくり返しながらまぶすとよい。まぶしながら時々霧吹きで吹きつける。毎回やるのがめんどうなら、そうしてまぶしたものに何食分かを追加してもよい。何回か追加して、まとめてポリバケツにいれる。

  1. このとき積み方を工夫すること。ポリバケツに入れたら、上から押しつける。そのあと、ごみが隠れるように米糠と油粕を少しふっておいて、霧吹きで発酵菌をひと吹きシュッとやっておく。
  2. バケツの口まできたとき、いちばん下は古漬け、上は浅漬け状態。このままかき混ぜる必要はありません。
  3. こうして次々と生ごみ+糠・油粕+発酵菌を追加していく。バケツの口近くまで仕込んだら、仕込みに使ったごみ袋にバケツの中身を全部あけてしまい、袋の口を閉じて2週間おけば発酵は完ぺき。このあと乾かさなくても密閉しておけば、いつでも小出しして使えます。

粉末発酵菌の場合は、発酵菌と糠・油粕を1:10程度に混ぜたものをまとめてつくっておいて使えばよいでしょう。これをタネ菌として生ごみにまぶして、仕込んでゆけばよいのです。

どのメーカーの発酵機がいいのかと、よく質問をうけます。しかし職業柄、あれがいい、これがよくないとはいえません。ご自分で確かめて使われるのが一番だと思います。あえていうならば、「微生物とハサミは使いよう」とでもいいましょうか。

では、成功を祈ります。

※このコラムは『ぐうたら農法のすすめ』『有機農業コツの科学』の一部より、著者の許可を得て転載しております。