14.本物の野菜って、どんな野菜?
本物の野菜と本物でない野菜はどこがどう違う?
[本物の野菜]
外見度 : 対称性があって、均整が取れている。
健康度 : 薄い緑があざやかで、生き生としている。日保ちがいい。
美人度 : 姿が美しい。内面の美しさがにじみでてくる。
育ち度 : 葉並びが整然としていて、みるからに伸び伸び育っている。
食味度 : おいしい。コクがある。固有の香りが清々しい。
調理度 : 切るとき固いが、煮ると柔らかい。調理時間が短い。
栄養度 : 養分のバランスがとれている。繊維がしっかりしているので、便通がよい。
季節度 : 常に旬のものであること。
消化度 : 消化がいいので、ウンコがきれいで適度の固さになる。
[本物でない野菜]
外見度 : 対称性が崩れている。均整が取れていない。
健康度 : 緑がどぎつく、黒ずんでいる。シナっとする。日保ちが悪い。
美人度 : 姿がわるい。厚化粧。
育ち度 : 葉並びがわるくてふぞろい、いじけている。
食味度 : まずいか、味がない。コクがない。固有の香りがどぎついか、ない。
調理度 : 切るときスカスカで、煮ても固い。調理時間が長い。
栄養度 : 養分のバランスがとれていない。繊維がバラバラで、スジが多く、歯に引っかかる。時に硝酸態窒素が過剰にある。
季節度 : 旬でない時期に出回りたがる。
消化度 : 消化が不均一で、ウンコに残ってくる。
誰でもできる野菜の目利きとポイント
[結球野菜]
キャベツやハクサイなどの結球野菜はひっくり返して、お尻の軸を見ます。二つ割りなら、半ケツの断面と同時に葉の付け根の軸を見ることです。軸の横断面には維管束(*)があります。これが、対称になっていて大きさがそろい整然と並んでいること。軸の縦断面が左右対称できれいな放物線を描いていること。
(*)維管束 … 養分・水分の通路となるほか、植物体を強固に保つ役目もある。
[葉物]
ほうれん草や小松菜などの葉物は外葉から内側へ順に葉の長さが規則正しく短くなっていること。葉脈が左右へ対称的に分れていること。
[果菜類]
なすやトマトなどの果菜類はヘタと柄の部分を見ましょう。ヘタに大小がなく、おなじ大きさでしっかりとしていること。この部分がヘナヘナだと、実入りがわるい。柄の断面を見て、維管束が対称的に整然と並んでいること。
[根菜類]
大根やごぼうなどの根菜類はヒゲ根をみること。葉を見てももちろんわかるが、ヒゲ根が細くて丈夫で、たくさんついているもの。
[イモ類]
イモ類は切らないとわからないが、イモの生長輪が年輪のように等間隔であること。筋張っていないこと。
以上が大体のポイントです。もちろん生でかじると、えぐ味や苦味がしないことも重要です。生でかじって甘味や旨味を感じる舌を鍛えてください。
おいしい素材があってこそ、おいしい料理ができるのです。
なぜ本物の野菜は左右対称になっているのでしょう?
その理由は、地中に充分張り巡らされた根から、ゆっくりと養分を吸い上げ、しっかりと生長するからです。
ところが、化学肥料のように、一度にどかっと養分が施されると、作物はそれっとばかりに、欲張って養分を吸い上げてしまいます。そうすると、養分が過剰になった時期だけ、異常な生長をします。本来あるべきところに葉脈がなくなったり、土壌中の養分が濃いところや薄いところができるため、養分の多かったところの根につながる地上部が異常に生長したりするのです。
ゆっくりと健康に育った作物と、異常な栄養で不健康に育った作物とでは細胞のひとつひとつも違ってきます。植物の細胞の周りには、セルロースやヘミセルロースの丈夫な繊維が取り巻いて細胞壁と呼ぶかたい殻をつくります。
この繊維をがっちりと固定するのが、ペクチンの役目です。包丁を入れるとき本物の野菜がかたいのは、細胞壁ががっちりとしているからです。ところが、いったん火を入れると繊維をかためているペクチンが溶けだすので、すぐに柔らかくなるのです。
反対に、異常な生長をしたことのある野菜は、細胞が均一に生長していません。粗雑な生長をしたもの、細胞壁の骨組がしっかりできていないものなどさまざまです。こんなのを煮ると、なかなか火が通らないし、食べると繊維が歯に引っかかったりします。
また、本物の野菜は薄いあざやかな緑色をしていますが、これを茹でるとよりいっそうあざやかに緑が濃くなるのが普通です。ところが不健康な野菜は、緑が黒ずんでいて、茹でると色が抜けてしまうのです。
※このコラムは『ぐうたら農法のすすめ』『有機農業コツの科学』の一部より、著者の許可を得て転載しております。