研修受入先の皆様へ
日本の農家数は215.3万戸で5年前に比べて37.5万戸(14.8%)減少し、耕作放棄地面積は富山県に匹敵する42.4万haと増加しています。そして、農業就業人口の平均年齢は66.3歳で、65歳以上が占める割合は63.5%です。高齢化、担い手不足とも相まって、農業の衰退はとどまるところを知りません(2015年2月、農林業センサス)。それに比例するように、地方の人口減少、中山間地域の過疎・高齢化など、農村の疲弊はますます拡大し、地方と都市の経済的格差も広がる一方です。
農業就業人口の減少は、地域社会の衰退につながります。「いかに新規就農者を確保するか」。このことは農業だけの問題ではなく、第一次産業を基盤にした地域社会の再生という広い観点に立てば、日本全体の問題でもあります。
その一方で、若い人たちを中心に、新規就農を目指す人たちも年々増えています。そのうち28%が有機農業での就農を希望し、有機農業に関心があると答えた人を含めると、93%という極めて高い数字になります。この人材を生かしていかねばなりません。
担い手の育成が急がれるなか、農林水産省も新規就農希望者および新規就農者に対して青年就農給付金の準備型および経営開始型を、受入農家に対して「農の雇用事業」などの施策を打ち出しています。しかし、それが就農後の経営安定につながる効果的な支援事業になるかどうかは、当事者である研修生と、受入農家の研修内容にかかっています。
少量多品目型から品目をしぼった小・中規模栽培まで、さまざまな営農スタイルがあるなかで、研修生がどのような経営を目指すのか。栽培品目は何にするのか、販路は、地方行政の支援はなどなど、就農までの課題は山積みです。そして何より、受入農家の技術力とそれを伝える力、さらに研修生の学ぶ意欲や勤勉さが欠かせません。さらに、受入農家と研修生をどうマッチングさせるかという課題もあります。
日本の国土の約70%を占める中山間地域と、そこで圧倒的多数を占める小規模農家の再生が、農林水産業が工業やさまざまなサービス業と共存できる多様で持続性のある社会をつくるために不可欠です。それを担う人材育成の場として、新規就農者の研修事業が大きな成果を生み出すことが期待されます。
私たちは、研修生をどのように受け入れ、育てていくべきでしょうか。彼ら、彼女らが農家として自立していくまで、どのようなシナリオを描き、どう実行すればよいのでしょうか。
本冊子は、これらの課題に答えるために、有機農業を希望する研修生などをどのように受け入れればよいかを整理しました。受入農家や関係機関にお役立ていただければ幸いです。
文/山下 一穂(有機農業参入促進協議会)
ガイドブック「有機農業をはじめよう!研修生を受け入れるために」3ページ
「研修受入先の心得」4-5ページも参照ください。