雑草対策

除草と抑草を使い分ける
有機農業の作業で大きな位置を占めるのが雑草対策です。常に完璧に除草を続ける栽培法から、あえて草を生やして活用しようとする栽培法まであります(表3)。どの方法を選ぶかによって、雑草対策はずいぶん違ってきます。また、除草と抑草の使い分けも課題になります。ていねいに草取りするか、刈り敷きで繁茂を抑えるかなど、作物種や栽培時期によって方法を選ぶことが技術の要点です。

従来は、畝間に雑草を生やすと、栄養を奪われて作物の生育に差し支えると考えられてきましたが、作物も草もともに育つ土づくりができれば、その問題は解消します。草があることで生まれる「天敵誘導」や「土中の有用微生物の活性化」など、草の過繁茂を適度に抑えながら、草がある利点をうまく使いこなすことが、今後の有機栽培技術の重要ポイントです。作物の生育初期は適度に除草を行い、大きく育った後は草と共存させるなど、作業の省力と合わせて多様なメリットを引き出します。

除草方法は、除草農具を使う手取り除草、畝間耕耘や土寄せなど管理機を用いた機械除草のほか、近年は太陽熱処理がよく利用されています。省力化のためにハウスや倉庫周辺で抑草シートを用いる方法もあります。

雑草草生を活用するには、刈り払い機やハンマーナイフモアによる畝間の草刈りが行われます。稲ワラや刈り草、モミガラなどを敷く有機物マルチ、アレロパシー効果を持つ特定の植物を草生させるリビングマルチによる抑草も普及してきました。

除草にしても抑草にしても、先手先手の作業ができるかどうかが重要です。草を排除した方が良い作物(背の低い葉根菜類など)と草生を利用しやすい作物(果菜類など)を見分け、栽培法の選択や作付計画の段階から雑草対策を念頭に置いてください。

資源として活用する
圃場周辺の野草や圃場内の除草で集めた草は、良質の堆肥材料です。雑草の種子が気になるのであれば、種子が着く夏の土用前に草を刈り取って使います。春から夏の草は分解も早く、堆肥化しやすいし、ススキやヨシなどは秋に刈り取って堆肥化すると、硬い繊維質により持続性のある腐植のもとになります。いずれも、土づくりに積極的に活用したいものです。

文/涌井 義郎

ガイドブック「有機農業をはじめよう!研修生を受け入れるために」13ページ

病害虫対策」12ページ、「水稲」14-15ページも参照ください。